コレクション

芦葉達磨図  伝 陸仲芦葉達磨は、禅宗の初祖である菩提達磨がインドから中国へ渡り梁の武帝と問答したものの、意が通じず機縁がないことを知り、一枚の芦の葉に乗って長江を渡って北方へと去ったという伝説を描くもの。本作では筆数を最小限に抑えた減筆体により、芦の上で風に吹かれる達磨の形象を巧みに表現している。  図上部には鎌倉時代から南北朝時代に活躍した禅僧・乾峰士曇(1285-1361)の賛がある。乾峰士曇は筑前博多の出身で、南山士雲に師事してその法を嗣いだ。東福寺、南禅寺を歴任し、文和年間(1352-55)には建長寺、円覚寺を兼任するなど、京都・鎌倉の両五山をまたいで活躍した。「前住南禅」と記していることから、乾峰が南禅寺を退いた観応年間(1350-52)から没年にあたる康安元年(1361)の間に着賛されたことがわかる。 掲載図書 『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2013年(解説 河合正友 『常盤山文庫創立80周年記念名品選』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 植松瑞希) 筆

 ろ よう だるま ず     りくちゅうかん

  • 絹本着色 100.3×41.5㎝
  • 南北朝時代 14世紀

芦葉達磨は、禅宗の初祖である菩提達磨がインドから中国へ渡り梁の武帝と問答したものの、意が通じず機縁がないことを知り、一枚の芦の葉に乗って長江を渡って北方へと去ったという伝説を描くもので、本図と類似の図様が多数ある。ただし、振り返る仕草、頭上に円光を伴い、手に錫杖を持ち、肩に袋をかける点は共通しているが、本図のみ風の方向が逆である。
 本図は狩野探幽の外題・狩野栄信の箱書によれば元時代の陸仲澗筆と鑑定されているが、筆者が明らかでなく、本図の国籍を断定するのも困難である。当文庫には狩野探幽の、東京国立博物館には狩野養信による本図の模本が所蔵されている。

来歴
 広島藩浅野家伝来

掲載図書
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 板倉聖哲)
『入城400年記念 広島浅野家の至宝 よみがえる大名文化』広島県立美術館、2019年(解説 隅川明宏)
『常盤山文庫創立80周年記念名品選』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 高橋真作)