墨蹟
墨蹟とは本来は墨筆で書かれた文字のことをいいますが、日本では特にすぐれた禅僧の書蹟を指し、これを珍重する慣習があります。常盤山文庫の墨蹟は中国・日本両国の禅僧、宗派も臨済宗・曹洞宗にまたがり、時代も13世紀から16世紀と広範囲にわたります。その質は高く、国宝2点、重要文化財16点を含んでいます。
絵画
常盤山文庫所蔵の絵画には中国絵画、日本絵画の両方がありますが、とくに室町水墨画を主軸としています。「送海東上人帰国図」(重文)や「帰郷省親図」(重文)、「拾得図」(重文)・「白衣観音図」・「達磨図」など禅林社会と関わりのある作品が多く、墨蹟の収蔵品と強く結びついたコレクションを形成しています。
工芸
常盤山文庫の工芸には中国の陶磁器および漆器があり、とくに宋時代の工芸の収集に力を注いできました。陶磁器では日本で古くから愛され「砧」と呼ばれてきた南宋の青磁や、現存作品四点のみのうちの三点にあたる官窯米色(べいしょく)青磁、漆器では犀皮(さいひ)とよばれる彫漆の水注など、極めて珍しい作品を含んでいます。近年では中国陶磁研究会の研究活動の活発化に伴い、コレクションの幅が広がっています。
天神
文庫の創立者菅原通濟が父恒覧(つねみ)から受け継いだ天神コレクションは、菅原姓にちなんで集められたもので、天神(菅原道真)信仰に伴い制作された絵画および天神にまつわる版画があります。絵画での天神像は渡唐天神・綱敷天神・束帯天神などの姿で表現され、制作時期も南北朝時代から明治時代までと多岐にわたります。