楼閣山水図 伝 孫君沢 筆
ろうかくさんすい ず そんくんたく
- 絹本着色 96.7×45.6㎝
- 明時代 16-17世紀
No.12006
水辺に立つ壮麗な楼閣に人々が集い、右上を指さして拱手の礼をとっている。何らかの理由で四方が切り詰められたため、彼らの視線の先にあったモチーフは失われてしまったと推測されているが、幸い本図とよく似た図像を持つ作品が現存する。明時代、16世紀の宮廷画家である安正文筆「黄鶴楼閣図」(上海博物館)がそれで、武漢(湖北省)、長江のほとりにある黄鶴楼と、その右手上方、鶴に乗って飛び去る仙人に拱手の礼をとる人々が描かれている。安正文の図像の一部を継承する本図も、もともと鶴と仙人が右上にいた黄鶴楼図の可能性がある。木々が紅葉していることから、画中の季節は秋であり、四季四幅対の一であったとも想定できるだろう。
元時代の画家、孫君沢は日本においては建築画家の名手として評価された。本作の狩野栄信箱書等にみられる孫君沢筆という伝称もその理解による。
来歴
広島藩浅野家伝来
掲載図書
『飛梅余香』財団法人常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『墨の美』常盤山文庫、1972年
『常盤山文庫名品展』神奈川県立博物館、1983年(解説 衛藤駿)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 板倉聖哲)
『入城400年記念 広島浅野家の至宝 よみがえる大名文化』広島県立美術館、2019年(解説 隅川明宏)
『常盤山文庫創立80周年記念名品選 蒐集のまなざし』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 植松瑞希)