コレクション

瀟湘八景図  雲渓永怡 筆

しょうしょうはっけいず  うんけいえいい

  • 紙本墨画
  • 室町時代 16世紀
No.13030

雪舟流の画人である雲渓永怡による瀟湘八景の図。瀟湘八景は中国の伝統的な画題で、洞庭湖(湖南省)に注ぐまでの湘江流域の八つの景を、季節や気象の変化を交えて描いたもの。日本でも山水画の中心的画題として流布し、やがて日本の地名を冠した各地の八景も選出された。
 作者の雲渓永怡は、室町時代後期に活躍し、雪舟の没年に近い永正2年(1505)、雪舟が描いた中国画の模写を相伝したと伝えられる。天文年間(1532-55)を中心に大内氏の周辺で画事を担っていたと推測されており、作品も山口県を中心とする地域に遺されている。
 本図は瀟湘八景の図とそれに対応する題詩が交互に添えられた巻子本である。題詩は元時代の天台僧で、詩画をよくした若芬玉澗(じゃくふんぎょっかん)の八景詩を転用している。「永怡」の朱文方印と「雲渓」の朱文鼎印がある。巻末には中橋狩野家の祖である狩野安信と、江戸期の書画鑑定家である畠山桂花による延宝9年(1681)の極書が付随する。

掲載図書
松下隆章『室町水墨画』第一輯、室町水墨画刊行会、1960年
『飛梅余香』常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 河合正朝)
『常盤山文庫創立80周年記念名品選 蒐集のまなざし』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 高橋真作)