コレクション

粟に雀図  狩野宗秀 筆

あわにすずめ ず  かのうそうしゅう

  • 紙本着色 30.9×42.5㎝
  • 桃山時代 16世紀
No.13044

風に揺らぎたわわに実をつけた粟と、これをついばもうと集まる三羽の雀が描かれ、その傍らに二茎の白い小菊が添えられる。現在は彩色が剥落して明瞭でないのが惜しいが、粟の一粒ずつを胡粉で盛り上げ、葉の表裏は緑青の濃淡で塗り分けている。翼を広げ餌を狙い今にも急降下しようとする一羽の雀、不安定に粟の茎にとまる二羽、画家はその動きを巧みに捉えている。
 画面右上方に「元秀」と読める朱文鼎印一顆が捺されている。この印を「元季」と読むともいう。これは豊臣秀吉の「秀」を使うことを憚ったからとされる。しかし、仔細は不明である。この印またはこれに近い印を使用したのは、狩野永徳(1543-90)の弟で、天正4年(1576)永徳が織田信長の命で安土城の障壁画制作にあたるため京都を離れるに際して狩野家を譲られた狩野宗秀(1559-1601)であるとされている。しかしこの印は、宗秀の子、甚之丞も使用したと伝えられるなど複雑で、今後に課題を残す。

掲載図書
秋山光夫『日本美術史論考』第一書房、1943年
『飛梅余香』常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 河合正朝)