龍図 李えき筆
りゅう ず
- 紙本墨画 56.6cm×137.5cm
- 明時代 15-16世紀
No.12009
龍首のみを横ものの大画面いっぱいに描き出したもので、墨の濃淡、吹墨を効果的に用いて迫力のある画面に仕立てている。筆者李えきは長楽(福建省)出身、字は純正、号は十洋、龍虎図を得意とし、詩文にも優れた画人と伝えられる。本図左上にも李えきが自ら、「龍は水物なり。至陽の精心にて其の神を得れば乃ち其の形を得。曽繇の壁を破るを笑えば、亦奚ぞ葉公の真を見るを必とせんや」と題を記している。張曽繇という画家が、ある寺の壁に龍を描き、最後に瞳を点じたところ、龍が壁を壊して飛び去ったという画龍点睛(がりょうてんせい)の故事、龍を好んだ葉公という貴族が邸宅のあちこちに龍の意匠を施したが、実物の龍が現れて腰をぬかしてしまったという葉公好龍(しょうこうこうりゅう)の故事を引き合いにだしつつ、水の生き物であるがゆえにとらえがたい龍の形は、その精神をつかまえて表さなければならないというその制作の理論を述べている。
来歴 広島藩浅野家伝来
掲載図書
『飛梅余香』財団法人常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『墨の美』常盤山文庫、1972年
『常盤山文庫名品展』神奈川県立博物館、1983年(解説 衛藤駿)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年
『常盤山文庫創立80周年記念名品選 蒐集のまなざし』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 植松瑞希)
ほか