コレクション

柿本人麿像  詫磨栄賀 筆 性海霊見 賛

かきのもとひとまろぞう   たくまえいが    しょうかいれいけん

  • 絹本着彩 84.3cm×41.3cm
  • 南北朝‐室町時代 14世紀
No.13001

本図は、歌仙と呼ばれ古くから歌人たちの尊崇を集めた柿本人麿を、なえた烏帽子をかぶり身体をやや斜にして脇息にもたれ、肩をひそめてはるか遠方をみやりながら苦吟をする姿でとらえている。右下には「栄賀」朱文重郭長方印が捺され、南北朝時代に活躍した詫磨派の絵師である詫磨栄賀の筆とされてきたが、近年、この印文には疑問もていされている。画面上部には、同じく南北朝時代の臨済僧である性海霊見(1315-96)の賛がある。性海は虎関師錬(1278-1346 → 墨蹟作品11026・11027)の法勅嗣で、入元後、東福寺や南禅寺の住持を歴任し、晩年は東福寺内の退耕庵に隠居した。画賛中に「東福寺四十三世性海霊見八十一歳」とあり、応永2年(1395)の年代が知られる。本図の存在によって、公家社会において歌道上達のために礼拝対象とされてきた人麿像が、14世紀に至り、禅林における五山詩僧たちの文芸趣味と結びつき同様に崇拝されたことがわかり、興味深い作品とされている。また、純粋なやまと絵作例に禅僧が着賛した和漢混交の作としても注目されている。

来歴
 赤星家、益田家
掲載図書
『飛梅余香』財団法人常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『墨の美』常盤山文庫、1972年
『常盤山文庫名品展』神奈川県立博物館、1983年(解説 衛藤駿)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 河合正朝)
『常盤山文庫創立80周年記念名品選 蒐集のまなざし』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 高橋真作)