コレクション

波濤群燕図  狩野探幽

はとうぐんえん ず

  • 絹本淡彩 151.7cm×27.0cm
  • 江戸時代 17世紀
No.13049

「法印探幽行年六十九歳筆」の款記と「筆峰」の朱文瓢印があり、幕府御用絵師として狩野派の再編を行い、江戸時代画壇の中心たる位置を確固なものにした狩野探幽(1602-74)、69歳の製作であることがわかる。くるくると舞い降りる二十一羽根の群燕と、波間の岩から見上げる二羽の燕を描く。燕の黒い背と白い腹とを交互に描き分けることで、燕たちが旋回しながら遊び戯れる様を巧みに表している。同時に、それらが重なり合うことで、燕の数を判然とさせないだまし絵のような趣向も凝らされている。あるいは、燕の群像表現と一羽の燕の降下する様の異時同図表現というダブルイメージが企図されているのかもしれない。極端に細い画面形式が、こうした機知に富んだ表現を存分に引き立てている。
 

掲載図書
『飛梅余香』財団法人常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『墨の美』常盤山文庫、1972年
『常盤山文庫名品展』神奈川県立博物館、1983年(解説 衛藤駿)
『探幽3兄弟展 狩野探幽・尚信・安信』板橋区立美術館・群馬県立近代美術館・読売新聞社・美術館連絡協議会、2014年(解説 佐々木英理子)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 河合正朝)
『常盤山文庫創立80周年記念名品選 蒐集のまなざし』公益財団法人常盤山文庫、2023年(解説 高橋真作)