拾得図 自閑 筆
じっとく ず じかん
- 紙本墨画 51.2cm×28.4cm
- 室町時代 16世紀
No.13066
箒を足元に横たえ左斜めに向いて立つ拾得の図。拾得は中国唐時代、天台山国清寺にいたとされ、寒山(かんざん)とならんで、それぞれ普賢菩薩と文殊菩薩の化身とされる。画中に「自閑」の朱文重郭方印があるが、自閑は本図以外に現存作品を確認できない逸伝の画家である。浅岡興禎の『古画備考』には、雪村画系とみなす祖栄・雪林・雪閑・竹隠などに次いで、この印章と本図が、他二印と渡唐天神図とともに掲載されている。筆太の柔軟で粗放、ところどころに擦れも厭わない筆致を交えた没骨描法による表現上の特徴は、賢江祥啓(けんこうしょうけい)筆の「寒山拾得図」やそれを踏襲する画系に通じている。
掲載図書
松下隆章『室町素墨画』第一輯、室町水墨画刊行会、1690年
『飛梅余香』財団法人常盤山文庫、1967年(解説 菅原壽雄)
『墨の美』常盤山文庫、1972年
『常盤山文庫名品展』神奈川県立博物館、1983年(解説 衛藤駿)
『常盤山文庫名品選 墨の彩り』常盤山文庫、2003年(解説 河合正朝)
『臥遊 時空をかける禅のまなざし』慶應義塾ミュージアム・コモンズ、2023年(解説 松谷芙美)